今日、2027年9月から、厚生年金の標準報酬月額上限が65万円→75万円に引き上げられるというトピックのニュースが流れてきました。
日本産経新聞 – 高所得者の厚生年金保険料上げ、27年9月から 厚労省案
東京新聞 – 満額年金、26年4月から拡大 シニアの月収62万円に引き上げ
このニュースを聞いて「高所得会社員の保険料が増えるのか?」「それならフリーランスのほうがトクなの?」と思ったので、結論について少し考えてみました。
今回は、上記記事で触れられている新制度の概要や保険料の増減を整理しながら、フリーランスの利点・経営者の負担増などを自分でも理解したいのでざっくりまとめていきます。
1. そもそも何が変わるの?
厚生労働省の方針によると、標準報酬月額(給与の等級)の上限が、現行の65万円から75万円に引き上げられます。たとえば月給が65万円を超えて75万円近い場合、今まで保険料計算に含まれていなかった上積み分が対象になるわけです。
- 2027年9月予定
- 上限 65万円 → 75万円
- 賞与などは別枠。今回は「月給(標準報酬月額)」の上限変更にフォーカス。
これによって、高所得帯(賞与を除いた年収798万円以上)の会社員は厚生年金(+健康保険)への自己負担が増え、**事業者(経営者)**としては従業員1人あたりの保険料負担がさらに上乗せされる見通しです。
2. 会社員の負担増で、フリーランスが得になる?
「会社員は給与から毎月天引きで保険料を取られる。じゃあフリーランスならそこを節約できるの?」
やはり実際にはそれほど単純でもみたいですが、条件次第ではフリーランスのほうが保険料負担を抑えられるケースがあるようです。
■ 会社員(高所得)の保険料イメージ
- 厚生年金:保険料率は18.3%前後(会社と本人が折半なので本人負担は約9.15%)。
- 健康保険:料率は9~10%台(地域や組合によって異なる)。こちらも折半負担。
- 標準報酬月額の上限が10万円アップ(65→75万円)すれば、月約9,000円前後、年間10万円以上の負担増が発生する場合があります。
■ フリーランスの保険料イメージ
- 国民年金:月16,980円(2024~25年時点)ほどで、収入に関係なく固定。
- 国民健康保険:所得に応じて負担増はあるものの、経費・控除をうまく活用すれば課税所得をコントロールできる。
さらにクリエイターであれば文芸美術国民健康保険を活用すれば国民健康保険を固定にできるので申し込みできる人で所得が一定以上ある場合は活用すればかなりの節税になります。フリーランスクリエイターの特権、保険料が安い『文芸美術国民健康保険』とは - 小規模企業共済:掛金(最大7万円/月)が全額所得控除になり、課税所得をさらに下げられる。
- iDeCo :会社員よりはフリーランスの方が枠が多いため、小規模企業共済のように所得控除で課税所得が下がる。
収入が高くても、小規模企業共済やiDeCoで課税所得を下げれば、結果的に国民健康保険料も抑えられることがあるため、フリーランスのほうが「手取り」の残り方が多くなるケースが出てくるということですね。
3. 経営者目線:1人あたり年間72万円の負担増?
高所得の社員を雇う企業の場合、標準報酬月額上限の引き上げは事業者負担も増やします。事業主は厚生年金保険料・健康保険料を折半するため、1人につき年間数十万円~70万円以上のコスト増が生じるという試算もあります。これって結構やばいですよね。。。
- 10万円×9.15% = 9,150円/月 → 年間約11万円(厚生年金のみの自己負担増のイメージ)
- 経営者(会社)側も同額負担するので、人件費としては年間20万~30万円単位で増えることに。
- さらに健康保険分も加味すると、トータル負担増は年間72万円程度になるという試算が取り沙汰されることも。
人手不足の時代でも「高所得の人を雇うとコストが跳ね上がる」となれば、企業は悩ましい局面です。
いよいよAIをエージェントとして活用して、人を雇うのは超高級手段?として非効率なものとして扱われるようになるかもしれません。
4. 結論:どちらが得かはライフプラン次第
「高所得者は会社員よりフリーランスがトクか?」――
確かに、保険料の負担面だけを見れば、フリーランスが圧倒的に有利に見える場面はあります。小規模企業共済をガッツリ掛けて所得を下げる、経費をしっかり活用するなどで最適化できるからです。
ただし、厚生年金には将来の年金上乗せや遺族年金・障害年金の手厚い保障が含まれています。また、雇用保険や労災保険など会社員ならではのメリットも大きいので、単純に保険料増=損、フリーランス=得、と言い切れない面があります。
損益分岐点
今回の厚生年金制度の改正で、標準報酬月額の上限が75万円に引き上げられた場合、フリーランスと会社員でどっちがお得になるのかの損益分岐点をChatGPTに計算してもらいました。
結論としてはフリーランスと会社員の保険料負担の損益分岐点となる課税所得は約970万円(課税事業者の場合1078万円)と試算されるようです。
(=フリーランスの課税所得が約970万円を超えると、**会社員のほうが保険料負担や将来の年金受給額において有利**になる可能性が高い。ただし節税手段を活用したらこの限りではない)
- 会社員:年収900万円 → 手取り約600万円前後
- フリーランス(小規模企業共済満額)で手取り600万円に相当する売上
- 非課税事業者(売上1,000万円以下)
- 約970万円の売上で同水準の手取りになる可能性あり
- 課税事業者(売上1,000万円超)
- 約1,078万円の売上で同水準の手取りになる可能性あり
- 非課税事業者(売上1,000万円以下)
ただし
- 会社員は厚生年金や雇用保険、障害年金・遺族年金などが手厚い。
- フリーランスは保険料や税金をコントロールしやすいが、公的保障は薄いため、民間保険などで補う必要も。
- 会社が高所得者を雇う場合、雇用コスト(厚生年金・健康保険の事業者負担分)が年間数十万~70万円超増加するリスクがある。
上計算の条件
- 会社員(厚生年金)
- 年収900万円(標準報酬月額75万円相当)
- 社会保険料(自己負担分)の合計:約127万円/年(厚生年金+健康保険)
- 所得税・住民税:概算20%で約180万円/年
- 手取り:おおよそ600万円/年
- フリーランス(小規模企業共済満額+その他必要経費あり)
- 国民年金:年約20万円(固定)
- 国民健康保険:課税所得に応じ変動
- 小規模企業共済:月7万円・年84万円を全額所得控除
- 売上1,000万円以下:消費税なし(非課税事業者)
- 売上1,000万円超:消費税約10%を納税(仕入控除は考慮せず単純計算)
- その他前提
- 所得税+住民税+国民健康保険を合わせて“おおむね年収の30%”と仮定(あくまで目安)。
- 消費税仕入控除などの細かい要素は一旦無視。
※この計算はかなり簡易的な条件でAIによって計算されたものですので、超ざっくりとした目安として見て頂けましたら幸いです。
5. まとめ
- 会社員(高所得層)
- 標準報酬月額上限が75万円へ上がると、自己負担と事業者負担の両面でコストが増える。
- 厚生年金は将来の年金額が多い・保険の保障が手厚いなどのメリットがある。
- フリーランス
- 国民年金+国民健康保険が基本だが、小規模企業共済や青色申告控除などで課税所得を下げ、保険料をコントロールしやすい。
- ただし、公的保障(雇用保険・厚生年金の上乗せ部分など)は会社員ほど充実していない。
- 経営者目線
- 高所得社員の保険料が増すぶん、会社の人件費も確実に増加。
- 人手不足の中で優秀な人材を確保したいが、年間の負担増も見逃せないジレンマがある。
- 損益分岐点
- 上記の世界では1000万円くらいまではフリーランスの方がお得な可能性?
- とはいえいろんな条件でかなりかわるのであくまで一参考として
- 節税手段や文芸美術国民健康保険などを活用したらフリーランスの方がお得?
最終的には、自分(または自社)がどの保障をどれだけ求めるか、どのくらいリスクを取れるかが鍵となります。保険料の引き上げがニュースになるたび「会社員は損?」などと言われがちですが、実際には年金受給額・各種保険メリットなどをトータルで考える必要があるわけです。
いずれにしても制度変更は避けられない流れ。 フリーランスも経営者も、最新情報を常にチェックして、自分に有利な選択肢を検討していくのが重要です。
最後に
「高所得会社員は厚生年金が増額されて負担が重くなる」というニュースは、一面だけ見ると「じゃあフリーランスになったほうがいい?」とも思えるかもしれません。
でも、本当に得になるかどうかは保障の差やライフスタイル、ライフプラン次第です。
それを踏まえたうえで、フリーランスを検討しているなら小規模企業共済や経費活用などの戦略をしっかり立てると、意外なほど税負担・保険料負担を抑えつつ生活基盤を築けるかもしれません。
本記事の内容はあくまで概算や一般的な説明です。具体的な数字や受給シミュレーションは、税理士や社労士など専門家と相談しながら、ご自身の状況に合った判断をしていただくことをおすすめします。
それでは、最後までお読みいただきありがとうございました!